4/30/2013

【book review】色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

読みました。一気に!

村上春樹がかなり現代に寄り添って、いまの時代の普通のひとに寄り添って書いてるなぁと思いました。

端的にいうと、主人公の多崎つくるくんが、高校時代のかけがえのない友人グループから突如として追放された"歴史"、または傷跡を、十六年たってからおそるおそる紐解いていくお話。

不思議な偶然や、謎めいた大学の下級生や、年上の彼女、そして時の流れに導かれて、つくるくんは真実に迫って行きます。

誰もが既視感を感じるような、人が人生を重ねて、何かが永遠に失われていくエピソードが、今までになくわかりやすい例を持って示されていたと思います。

今回は、レクサスだとか、早稲田だとか、名古屋のなんとかかんとかとか、固有名詞や特定の地名が多いことも面白く感じました。

例によって、中流から上流階級の話が多いね。ところで、名古屋ではどんな評判なのか気になる。

わたしにも、かけがえのない、密度を持った高校時代、大学時代の友人たちがいるし、(彼らのほとんどはいまも近いところにいるけれど、たしかに、あの密度は失われている) なんだかよくわからないけど運命かなにかで思ってもない仕事についてなんとなく働いているし、好きな人をめぐる嫉妬やなんやかやもあるし、きらきらしていた憧れの人がある日輝いてみえなくなることも、誰かに憧れられていた自分があー、さえなくなってるなということもあるし、たまに大どんでん返しもあるし、

とにかく既視感。
ふしぎと、つくるくんを通して内省的になれるお話でした。

さらりと読めつつ、大事にかみしめたくなる本でした。